我が名はクロウ。
我はリクレールの命により青年に付き従う事になったトーテム。
「おい」
青年が私に話し掛ける。
「どうした、『ゴンベエ』よ」
「その名を呼ぶな!」
「す、すまん」
青年の名はゴンベエ。
彼はリクレールに脅され、この地を守るため遣わされた者だ。
「俺はこれからどうしたらいい?」
ゴンベエは我に問い掛ける。
それもそうだろう。
誰でもいきなり脅されてこんな所に降ろされれば……。
「とりあえずはこの森を出て、この近くの街に行くと良いだろう」
「わかった」
青年と我は森を歩き出す。
「……何をやっている?」
ふと見ると、ゴンベエは地面を這っていた……。
「匍匐前進」
「そうではなくて、何故そんなことをしていると聞いてるんだ!!」
「知らないのか?
これが勇者の正しい歩き方だ!!」
「えぇええええ!?」
我らがそんなことをしていると突然、凶暴な野獣の咆哮が森に響き渡る……!!
そして、茂みから1匹の獣が現れた!
「なんだ!?」
「野犬だ」
現れた野犬は、何かの力によって凶暴化していた。
その野犬の瞳はジッと我らを牽制するかのように睨み付け、
今にも飛び掛らんと言わんばかりに低い唸り声を出し続ける……。
「……どうする?」
「とりあえず立ち上がってくれ」
「やだ!」
「何でだー!?」
「うるせー!
これが正しい英雄の戦闘フォームだー!!」
「嘘だあああああーーーーー!!」
そんな事を言ってる間に野犬はゴンベエに向かい襲い掛かって来た!
「おらーゴロゴロゴロ!!」
ゴンベエは飛び掛ってくる野犬に対し、地面を転がってその攻撃を上手く避ける!
「うわぁあぁぁぁぁぁーーーー!!」
ゴン!!
勢いよく転がりすぎて、ゴンベエは木に顔面からぶつかってしまった!
「だ、大丈夫か?」
「と、とりあえずは……」
我はゴンベエを制止すると共に指示を促がす。
「あぁぁ……」
まだ戸惑ってはいるものの、ゴンベエは剣を構え直し相手の動きを見つめる……。
野犬は大きく弧を描くように駆け、再びゴンベエに飛び掛る!
「避けろ!」
「!!」
我の指示に反応し、ゴンベエは野犬の攻撃を受け流す。
「上手いぞ!」
攻撃をはずした野犬は再び勢いを殺さぬよう弧を描きこちらにまた向かい来る!
「今度は避けると共に相手の動きに合わせて剣を振るってみろ」
「わかった」
飛び跳ねた野犬を目で捉え、剣をしっかりと握りなおす……
「今だ!!」
勢いよく飛び掛る野犬を軽くあしらいながら、擦れ違いざまに剣の一撃を御見舞い!!
野犬は血を噴きながらそのまま飛んでいった。
「はぁはぁはぁ……」
振り返ると野犬は地に伏しており、起き上がる気配は無かった……。
「やったのか……?」
ゴンベエは肩で息をしながら問い掛ける。
「ああ、初めてにしては上出来だ」
「そうか……」
ゴンベエはその場に倒れこむ……。
「大丈夫か?」
「まあな……。
でも、これからはこんな事がずっと続くんだろ……?」
「ああ、そうだ」
「そうか……」
ため息を吐きながら何かを諦めたかのようにゴンベエは納得する……。
「ここにいてはまた野犬に襲われるだろう。
休むのは近くの街に着いてからにした方がいいな」
「……そうだな」
ゴンベエは重そうにその身を起こす……。
そして我らは森を抜け街に向かった……。
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